都内22の保育園を運営する「社会福祉法人 東京児童協会」では、保育士はもちろん各園にはさまざまな人が勤務しています。なかでも子どもたちや職員の健康管理を担っているのが看護師グループ。健康面はもとより、保育や保護者支援などにも携わるなど、幅広く活躍しています。
そんな東京児童協会に属する看護師グループが「いのちキラキラ」と題して、子どもたちに命の大切さを伝える独自の健康教育活動を行っています。そこで、同プロジェクトの中心メンバー・馬場先生と前島先生に、目的やこれまでの活動などを伺いました。
看護師プロジェクト「いのちキラキラ」とは?
平成27年に発足した看護師プロジェクト「いのちキラキラ」。これは、法人内の全児童が質の高い健康教育を受けることで、将来自分自身や他者の心身を大切に思い、お互いを認め合える健全な成人になり、その人らしく社会に属することができることを目的としています。
「各園にいる看護師は、月ごとに健康に関わるテーマに沿って、耳や虫歯の話などを健康教育として行っています。その限られた時間のなか、1人でやるには限界があること、もっと大きなテーマで看護師ならではの視点で命の大切さを伝えてあげたい……と、馬場先生と一緒に話していたんです」と、前島先生。
2人の看護師の会話からどんどん夢が広がり、理事長先生に直談判し、やがてそれが看護師プロジェクト「いのちキラキラ」として正式に発足しました。
2022年は、看護師プロジェクトは、馬場先生と前島先生含む看護師5人が中心となってテーマを作り、各園で展開する活動を行って行く予定だそうです。
看護師プロジェクト「いのちキラキラ」の活動内容
看護師プロジェクト「いのちキラキラ」では、看護師が中心となり各園を訪問し、保育士と協力しながら年長児に「生まれる」・「脳」・「いのちを守る」などをテーマに、健康教育活動を行っています。
あるときは、「生まれる」をテーマに、妊娠しているお母さん役を立てて、だんだんお腹が大きくなっていく様子を劇仕立てで再現したり、実際にリュックに小麦粉を入れて子どもたちに妊婦さんの疑似体験をしてもらったり。
また、聴診器で自分の心臓の音をリアルに聞いてもらったうえで、お母さんのお腹の中にいるときから絶え間なく心臓はずっと動いていることを肌で感じてもらったこともあったそうです。
さらに、保護者にも参加してもらい、かつての妊娠・出産時の気持ちや当時の様子を子どもたちの前で話してもらったこともあるそうです。
クイズを取り入れるなど、子どもたちが飽きない工夫も。加えて、活動を終えると、そのときの「思い」をカードに書いてもらうことも行っています。
こうして子どもたちそれぞれが自分の思いをまとめたカードは、各園の玄関に張り出し、保護者にも見てもらっていたそうです。
「大切なテーマを伝えることに加え、みんなで話を聞くことや他の園から看護師が来て話をする“特別感”なども感じてもらえていると思います」と前島先生。
「各園を訪問し同じことを同じ年齢の子どもたちにすることで、子どもたちの反応がそれぞれ違うのもおもしろいですよ」と馬場先生。
「いのちキラキラ」が優秀賞を受賞!
同プロジェクトは、各園を訪問して行っていますが、未曾有の新型コロナウイルスの影響で訪問ができない状況に。そこで、園に行くことなくリモートで展開できる活動を行ったこともありました。
そんなコロナ禍で完成したのが、「いのちをまもる」としたテーマでいちから制作した「ありがとういのちマン」という紙芝居(動画)でした。これならズームなどのツールを使って遠隔での活動が可能です。
紙芝居の内容は、主役の「いのちマン」が園児の「ぴぃこちゃん」に日常生活の中で命を守る大切さを説くというストーリー。それと同時に園児「ぴぃこちゃん」が「いのちをまもる」行動をすると、「いのちまもるカード」のスタンプが1つずつ光り輝くというもの。
いのちの大切さを噛み砕いてリモートで伝える難しさに直面したものの、プロジェクトチームの努力の甲斐あって、しっかり子どもたちの心に届く活動になりました。こうした活動は、保育士の間でも好評だといいます。
令和3年、これまでの「いのちキラキラ」の活動内容を日本保育協会の「第16回保育実践研究」に応募。すると、見事に優秀賞を受賞し「保育の意義を広める研究」として認められました。
未来を担う子どもたちに届ける活動を継続して展開!
「いのちキラキラ」は、命に関する大切なことを看護師ならではの目線で、展開し活動しているプロジェクトです。場合によってはセンシティブな内容になることもあり、なによりそれを子どもに噛み砕いて伝えることは一筋縄ではいかない部分も多々あります。
ですが、これも子どもたちの未来のためと、今後も精力的に活動を行っていく予定です。新しく入ったメンバーと一緒に、新たなテーマ作りを話し合っているそうです。
これからさまざまな困難を乗り越えていくであろう子どもたちの未来を、少しでも応援したい、力になりたい、そんな思いを秘めた看護師グループのプロジェクト。今後の活動内容に注目です。