都内で24の保育園と子ども園を運営する東京児童協会は、園児たちの食育にも力を入れています。全ての園に栄養士がいて、季節を感じられる献立やおやつを保育室の近くに設置された調理室で用意します。また、子どもたちが食への関心を深めるための食育活動も積極的に行っています。
今回は、「亀戸こころ保育園」で開催された、栄養士の先生による食育活動「鮭の解体」レポートをお届けします。切り身になる前の魚を見る機会が少ない子どもたち。大きな鮭が、先生の手により3枚におろされていく様子をどんな風に見るのでしょうか。
どうして「いただきます」「ごちそうさま」っていうのかな?
鮭を解体する前に、栄養士の先生からのお話を聞きます。
「ごはんを食べるときは、「いただきます」。食べ終わったら、「ごちそうさま」。どうして言うのかな?」
子どもたちは、その質問に「作ってくれたひとへの挨拶」「食べるときのお約束~!」と、大きな声で答えます。
栄養士の先生は続けます。
「お魚やお肉、野菜は、みんなの口の中に入るまでにはたくさんの工程があります。豚さん、牛さんを育ててくれる人がいます。お魚さんを釣ってくれる人がいます。そして、それを小さく切ってくれる人がいます。売ってくれる人がいて、買う人がいます。それを食べられるように調理してくれる人がいます。そのたくさんの人たちに、「ありがとう」という感謝の気持ちを込めて、「いただきます」「ごちそうさま」を言います。これは、命をいただいているみんなの、大事なお仕事です。みんな言ってくれるかな?」
子どもたちは、大きな声で 「はい!」を手を挙げていました。
大きな鮭が登場すると、「おおきい~!」と子どもたちは大騒ぎ!
今回使うのは、オスの鮭です。
「お腹を切ったら、お腹の中にある内臓をきれいに取ります。そして、骨の近くにある血筋をとって洗ったら、鮭を上の身と骨、下の身に分けて3枚にします」
内臓を取り出すところでは、「こわーい!」「きゃーーーーー!」と言う子や、「くさーい!」と魚の臭いに反応する子などさまざま。
先生が鮭をさばいていく様子を見ながら、この鮭がどのような形に変化していくのか興味津々の様子。
「背びれ、尾びれ、尻びれがどんな仕事をしているかわかる?」と聞く先生に、みんなは手を挙げながら、「泳ぐため~!」と答えていました。
解体された鮭を触ってみる
解体中は、怖がったり、驚いたりしていた子どもたちですが、解体後に実際に触れてみる時間になると、物おじせずに内臓や身を触って感触を確かめていました。
ほとんどの園児が、鮭の血を洗ったボウルに顔を近づけて臭いを嗅いでいました。
普段、切り身になった状態のお魚を見ることがほとんどな子どもたちにとって、魚の血の臭いを嗅いだり、内臓を見たり触れたりすることで、命をいただいていることを知る貴重な体験をすることができました。
「つめたーい!」「ざらざらしてる~!」、実際に触ってみたことで、見ているだけではわからなかったことを吸収していきます。
指先や手の平で触り、感触を確かめています。
解体した鮭は、翌日の給食で
解体された鮭は、翌日の給食に「ちゃんちゃん焼き」として登場しました。
この見せ方も、栄養士さんたちが工夫しています。
「北海道で食べられているちゃんちゃん焼きのように提供し、子どもたちに「どれがいい?」と選んでもらえたら良いなと思っています」と、栄養士の先生が話していましたが、この状態で出てきたら、前日の解体を思い出して、より食べることに感謝の気持ちがわいてきそうです。
ただ、鮭を使った給食が出るだけではなく、もとの形を再現して子どもたちの前に出すことで「昨日の鮭が出てきた!」とつながる工夫をしているそう。それにしても、とってもおいしそう!
魚が苦手な子もいそうですが、その場合はどうするのでしょうか。
「現在は、魚嫌いな子がいないんです。秋刀魚やイワシのように、骨が気になる魚はちょっぴり食べるのがイヤという先入観がありますが、鮭はみんなみんな大好きです」
食に関するたくさんの経験を保育園で
鮭の解体以外にも、野菜の皮を使って染めたランチョンマット作りや園庭にある畑での野菜作りなど、食に興味が深まるような体験を子どもたちは日々保育園で経験しています。
これも、栄養士さん、調理師さんとの距離が近い東京児童協会の保育園ならではのこと。
「 「いただきます」と「ごちそうさま」を意識してもらうために、実際に鮭を解体して、命をいただいているよっていうことを子どもたちにわかってもらえたらいいな、伝われば良いなと思いながら、鮭を解体しています。今年は、泣いている子がいなかったですが、毎年怖いという声は聞こえてきます。でも、怖いという経験も大事だと思っています。命をもらうっていうことは 重みがあることですし、それが友達を傷つけちゃいけないってところにも繋がってくるかなと思っています」
子どもたちの成長を、食の面から支えてくれる栄養士さんたち。子どもたちは、命のありがたみを感じながら、おいしそうにちゃんちゃん焼きを食べていました。